福岡市の自立支援医療制度(精神通院医療)の手続き

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 うつ病、双極症(=躁うつ病、双極性障害)、統合失調症などの精神疾患の治療は病院やクリニックから処方されたお薬で治療する薬物療法が中心です。通院、服薬も長期間に及びますから経済的負担も大きくなります。

自治体では患者さんが治療を継続できるように医療助成制度を設けて経済的な支援をしています。それが自立支援医療制度です。継続的に治療が必要と判断された場合は、精神障害者手帳を取得していなくても、どなたでも自立支援医療制度を利用できます。また、自立支援医療の申請には通院期間に関する規定はありません1。継続的な治療が必要であればいつでも申請することができます。

この記事では福岡市の自立支援医療制度について手続きや内容などを具体的にご紹介します。

過去記事:

自立支援医療制度で治療費を軽減!自立支援医療制度について

自立支援医療制度についての紹介

自立支援医療制度の対象の方

対象は精神疾患(てんかんを含む)により、通院による治療を続ける必要がある方です。                     対象となるのは全ての精神障害で、具体的には次のような疾患を含みます。

  • 統合失調症
  • うつ病、そううつ病(=双極症)などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物やアルコールによる急性中毒またはその依存症
  • 高次脳機能障害
  • 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
  • そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)

自立支援医療で受けられるサービス

窓口負担

  • 病院、クリニックでの窓口負担が1割負担になる
  • 薬局での窓口負担が1割負担になる
  • 訪問看護の窓口負担が1割負担になる
  • デイケアの窓口負担が1割負担になる
  • 世帯所得に応じて月額負担の上限額までしか窓口負担を支払わなくてよくなる(月額上限額)
  • (入院については1割負担、月額上限額の対象となりません)

指定自立支援医療機関

窓口負担の割引はほとんどの医療機関で受けることができますが「指定自立支援医療機関」でない場合は割引を受けることができません(まれに指定されていな調剤薬局がありますのでご確認ください)。通院している病院が指定自立支援医療機関であるかは保健福祉センターの窓口、福岡市のwebサイトで確認することができます。

指定自立支援医療(精神通院)機関一覧(2025年4月30日現在)

新規申請に必要な書類、手続き後に必要なこと

全員が必要な書類

 自立支援医療の新規申請手続きに必要な書類は以下の通りです。

  1. 「自立支援医療支給認定申請書」
  2. 「診断書(精神科通院医療用)」(医師が作成)
  3. 「世帯所得の状況」
  4. 「重度かつ継続の意見書」(医師が作成)
  5. 「同意書」
  6. 健康保険証の写し/資格確認書/資格情報のお知らせ、のいずれかの書類2(注2・紙の保険証が無い場合はどうするか)
  7. 番号確認書類、身元確認書類:個人番号カード(マイナンバーカード)3 (注3・個人番号カードがない場合はどうするのか)
  8. 収入が80万以下で障害年金を受給している場合は「年金の振り込み通知書」(あるいは年金の振込額が記載されている預金通帳のページのコピー)

書類は各区の保健福祉センターの窓口(精神保健福祉係)でももらえますが、福岡市のサイトからもダウンロードできます。必要な書類は状況によって異なりますので詳しくは保健福祉センターにお尋ねください。

自立支援医療(精神通院)と精神障害者保健福祉手帳(福岡市)

払い戻し申請

 新規で自立支援医療を申請してから、審査等を経て受給者証が発行されるまでは2~3か月ほどかかります。できあがった自立支援医療受給者証と自己負担上限額管理表は住民票がある住所に郵送で届きます。受給者証が手元に届くまでに医療機関等を受診する場合は、手続き中である旨を医療機関等の窓口で伝えましょう。

なお、自立支援医療を申請する以前の医療費については払い戻しの対象ではありません。

受給者証が届くまでの窓口負担は3割ですが、新規申請の場合は、後から払い戻し申請をすることで、申請日から受給者証が届いた日までの間に支払った医療費の2割分については払い戻しされる場合があります

払い戻し申請には「自立支援医療受給者証」「自己負担上限額管理票」、3割負担で医療費を払った際の領収書原本の3点が必要です。忘れずに払い戻し申請も行いましょう。

福岡市では、払い戻し申請は病院、薬局などの医療機関の窓口で行うことができますが、医療機関側の手続きが煩雑な為、払い戻し申請を受け付けるかどうかは病院の判断によります。払い戻しができる医療機関とできない医療機関がありますので注意が必要です。

月額上限額(所得上限)

自立支援医療制度では公的医療保険で3割の窓口負担を1割に軽減します。
また、この1割の負担が高額にならないよう、世帯の所得状況に応じて月額上限額が定められています。月額上限額は前年度の所得税の額によって決められます。負担額上限の目安は次の表の通りです。

(表1)

所得区分世帯所得状況月額負担上限「重度かつ継続」の場合の上限額
生活保護生活保護を受給している世帯0円0円
低所得1市町村民税非課税であり本人の所得が80万円以下42,500円2,500円
低所得2市町村民税非課税であり本人の所得が80万円より上(80万1円以上)5,000円5,000円
中間所得1市民税の納税額が33,000円未満
(年収約290~400万円未満)
「高額療養費制度」の限度額が上限5,000円
中間所得2市民税の納税額が33,000~235,000円未満
(年収:約400~833万円未満)
 〃10,000円
一定所得以上市民税の納税額が235,000円以上
(年収約833万円以上)
対象外20,000円

福岡市の住民税のおおよその目安を知りたい方は、住民税の自動計算サイトを参考にしてください。

提出書類の記入例

「自立支援医療費支給認定書」

  • 内容:初めて申請する場合は「新規」に〇をしてください。
  • 障がい者・児:ご自分のお名前を記入してください。(例)つなぐ 花子 ツナグ ハナコ
  • 年齢:(例)35歳
  • 生年月日:(例)平成1年1月1日
  • 住所:(例)福岡市早良区原6丁目23−18 ※(フリガナ)フクオカシサワラクハラ6チョウメ23-18
  • 個人番号:個人番号カード(マイナンバーカード)裏の12桁の番号を記入してください。
    (例)1234-5678-9012-3456
  • 電話番号:092-852-9910
  • ※障がい者の方が18歳未満の場合は、保護者氏名等も記入してください
  • 保護者氏名:(例)つなぐ 太郎 ツナグ タロウ
  • 保護者住所:ご本人とご住所が異なる場合のみ記入してください。同じ場合は空欄です。
  • 個人番号:保護者の方の個人番号が必要です。窓口で記入する場合は番号をメモしてお持ちください。
  • 受診者との関係:(例)父
  • 電話番号:ご本人とお電話番号が異なる場合のみ記載。同じ場合は空欄です。
  • 受診者の被保険者証の記号及び番号:(例)(青)55061306-3、(桃)123456789
  •  
  • 受診者と同一被保険者証の記号及び番号:世帯主の方(例の場合は「父」)の保険証番号を記入してください。
  • 保険者名:(青)全国健康保険協会東京支部、(桃)福岡市国保
  • 個人番号:例の場合は「父」の個人番号を記入してください。
  • 該当する所得区分:(表1)を参考にご自分の世帯が該当する区分に〇をしてください。
  • 重度かつ継続:かかりつけの病院にご確認ください。
  • 身体障害者手帳番号・等級:(例)0000000001、2級
  • 精神障害者福祉手帳番号:お持ちの場合は「受給者番号」と「等級」を記載してください。
  • 医療機関名:5かかりつけの病院1か所、調剤薬局まで、訪問看護ステーション1カ所を記入します。(例)つなぐメンタルクリニック、A調剤薬局、B調剤薬局、訪問看護ステーションつなぐ、デイケアつなぐ、など
  • 所在地・電話番号:上記医療機関の住所と電話番号を記載してください。
  • 署名・記載日:書類を記入した日付と、自著で署名を記入します。(例)令和6年11月19日 つなぐ太郎

「世帯の所得状況」

  • 1,2,3,4,6はご自身の状況を記入してください。わからない場合は「わからない」に〇をします。
  • 5.【国民障害基礎年金】1級→年額993,750円、2級→年額795,000円(令和5年度)
  • 4.※書類を記入した日に福岡市に住民票がない場合は、「市町村民税課税証明書(あるいは非課税証明書)」を提出してください。

「同意書」

  • ②保護者がいる場合は全員の氏名と生年月日を記入します。(例)つなぐ 太郎 昭和50年1月1日、つなぐ 洋子 昭和51年4月1日
  • ③世帯に入っている人全員のお名前、生年月日を記入します。(例)つなぐ 太郎 昭和50年1月1日、つなぐ 洋子 昭和51年4月1日、つなぐ 次郎 平成2年2月1日

「自立支援医療費 支給認定申請書(継紙)」

受給者→本人(つなぐ 花子)

被保険者・組合員→健康保険証の世帯主氏名に記載されているお名前です(つなぐ 太郎)

保護者→保護者全員(つなぐ 太郎、つなぐ 洋子)

世帯員1→住民票に記載されている世帯員全員のお名前と全員の個人番号が必要です(つなぐ 次郎)

医療機関の複数指定に関する理由書

 病院を複数個所登録したい場合には「医療機関の複数指定に関する理由書」を提出する必要があります。これは例えば主として受診する病院にデイケアが無い場合、別の病院でデイケアのみ利用する際に必要になる書類です。緊急時にいつもの病院とは違う病院を受診するため、というような理由は認められませんので注意が必要です。書類の作成はかかりつけの病院の医師にご相談ください。

医療機関の複数指定に関する理由書(PDF)

自立支援医療のデメリット

 自立支援医療を受けるデメリットはありません。

自立支援医療を受けると、自分が精神疾患だということが職場にバレてしまうのではないか、という心配をして申請をしない方がいらっしゃいます。このブログ記事で見てきたように申請時に会社に提出したり、会社から発行してもらう書類は一切ありませんので、自分で職場に申告しない限りは、精神疾患で継続的な治療を受けていることを知られることはありません。自立支援医療を受けることで生じるデメリットはありませんので、安心してこの制度を利用して治療に専念してください。

補足:更新について

 更新の手続きは1年に1回必要になります。診断書の提出については病状、治療方針に変更がない場合は2年に1回となります。更新手続きは1~2か月かかりますので早めの手続きをお勧めします。手続きは有効期間終了3か月前から受け付けています。有効期限内に更新ができなかった場合は「再開申請」が必要になり時間がかかりますので注意してください。再開申請をしない限りは自立支援医療の適用はされず、期限切れから再開までの間に病院に行った場合の医療費は3割負担となります。

 更新の際に必要な書類は新規の申請の際の必要書類と重複していて、概ね以下の通りですが、各個人によって異なりますので詳細は各区の保健福祉センターにご確認ください。

  1. 現在お手持ちの「自立支援医療受給者証」
  2. 「健康保険証」(/資格確認書/資格情報のお知らせ、のいずれか)
  3. 「世帯所得の状況」
  4. 「診断書(精神科通院医療用)」2年に1回必要
  5. 個人番号カード
  6. 収入が80万以下で障害年金を受給している場合は「年金の振り込み通知書」(あるいは年金の振込額が記載されている預金通帳6のページのコピー)

まとめ

 記載する項目がたくさんありますので、申請書は福岡市のホームページからあらかじめダウンロードして、わかる部分は記入して保健所に持っていくことをおすすめします。

自立支援医療(精神通院)と精神障害者保健福祉手帳(福岡市)

 必要な書類も各個人によって異なりますので、わからない点があれば、あらかじめ保健福祉センターにお電話でご確認ください。

「診断書(精神科通院医療用)」「重度かつ継続の意見書」は、かかりつけの病院で書いてもらいますが、時間がかかる場合が多いので、早めに主治医の先生にご相談ください。

精神疾患は継続して治療することが重要です。そのための経済的負担を軽減するためにも、ぜひ自立支援医療費制度を活用しましょう。

就労継続支援事業所つなぐは福岡市早良区原にある事業所です。当事業所では障害を持った方の就労のサポートを行っています。ぜひホームページもご覧ください!ご相談、お問い合わせもお待ちしています。

※本ブログ記事は2025年5月21日時点の情報です。

(記事作成:K. S.)

  1. よく勘違いされがちなのですが、初診から6ヶ月以上経過している必要があるのは、精神障害者福祉手帳の申請であって自立支援医療の申請ではありません。自立支援医療の申請に、何ヶ月以上通院していないと申請できない、という決まりはありませんので、継続的な治療が必要と医師から判断された場合は早めの申請をしましょう。 ↩︎
  2. 2024年12月から紙の健康保険証の新規発行が停止になりました。それに伴い、紙の保険証をお持ちでない方もいらっしゃいます。マイナ保険証しかお持ちでない場合は「健康保険証の写し」は必要ありません。保健所で資格情報を調べてもらうことができます。ただし、紙の保険証もお持ちの場合は持参すると手続きがスムーズになります。 ↩︎
  3. 個人番号カード(マイナンバーカード)そのものをお持ちでない場合は、①番号確認書類(「個人番号入り住民票」、「個人番号入り住民票記載事項証明書」、「通知カード」のいずれか一点、②身元確認書類(「精神障害者福祉手帳」、「運転免許証」、「パスポート」、「写真入り住基カード」のいずれか一点、もしくは以下の書類から二点:自立支援医療受給者証/所得証明書/健康保険の被保険者証/介護保険の被保険者証/住民票/生活保護証明書/年金手帳または年金証書/こども医療証またはひとり親医療証または障害者医療証/氏名、住所、生年月日の記載がある医師の診断書等)を提出する必要があります。 ↩︎
  4. 障害基礎年金の年額は1級で972,250円、2級で777,800円です。
    例えば、住民税非課税世帯でご本人の収入が障害基礎年金2級だけの場合は低所得1の区分に該当して、月額上限負担は2,500円になります。詳しくはお住まいの区の保健福祉センターにお問い合わせください。 ↩︎
  5. ここに記載されている医療機関以外では自立支援医療を受けることはできません。転院するなど、別の医療機関で自立支援医療を受けたい場合は、各区の保健福祉センターでの手続きが必要となります。 ↩︎
  6. ネット銀行のように通帳がない金融機関の場合は、契約者の氏名と口座番号が分かるページと、最新の振込額が記載されているページのスクリーンショットを印刷して提出します。 ↩︎
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