双極症という生き方:(2) 仕事と経済的安定

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この文章は、私自身の経験に基づいた個人的な見解です。

Part 2:双極症と「働くこと」

私は長い間、病気の波に苦しみ、思うように働けない時期が続きました。最初に症状が現れたのは大学時代。体調が悪化し、休学を余儀なくされ、気づけば長い空白期間ができてしまいました。回復後に就職活動を始めたものの、履歴書に残る“空白”。「この期間、どう説明すればいいんだろう?」「もし再発したら、また迷惑をかけるのでは?」そんな不安が常につきまとっていました。

同じように悩んでいる方もいるかもしれません。ここでは、私が双極症と向き合いながら、どのように「働くこと」と折り合いをつけてきたのかお話ししたいと思います。

病気で仕事ができなくなるということ

病気のことを正直に職場に伝えられなかった私は、大きな失敗を経験しました。「今日は体調が悪くて……明日は出社します」そんな電話を何度も繰り返し、結局は1か月単位の休職をすることになり、信頼を失い、自分自身も強い自己嫌悪に陥っていきました。

今振り返ってみて思うのは、「明日には治るかも」という根拠のない希望にすがっていたことが、一番良くなかったということ。本当は、体調の悪化を感じた時点で、医師に相談し、1週間〜1ヶ月単位でしっかりと休む決断をするべきだったのです。場合によっては入院治療が必要なこともあります。そのほうが結果的に早く回復でき、長い目で見て、働き続けることにもつながります。

働く上でのセルフケア

働くことは、生活に安定と張り合いをもたらしてくれますが、同時に心身のエネルギーを大きく消耗します。双極症の波を穏やかに保つためには、日々のセルフケアが何よりも大切です。

1. 自分の体と心の状態を「見える化」する 私は毎日の気分や睡眠時間、活動量を記録する習慣をつけました。これにより、波が来る予兆にいち早く気づき、早めに対策を打つことができます。

  • 記録アプリ: 気分の高低や感情の変化を毎日記録します。
  • 睡眠トラッカー: 睡眠時間や質を把握し、睡眠不足による気分の波の悪化を防ぎます。
  • 記録ノート: 自分の気持ちや考えを文章にすることで、心の整理がつきやすくなります。書けない日があっても、自分を責めない。「今日は調子が悪かったんだな」と、ありのままの自分を受け入れます。書けない日も、自分の状態を教えてくれる大切なサインです。

2. 休憩とリラックスの時間を確保する 仕事中は、定期的に休憩を取りましょう。少し席を離れてストレッチをしたり、窓の外を眺めたり、好きな音楽を数分間聴くなど、自分なりのリフレッシュ法を見つけることが大切です。

3. 無理な目標設定はしない 「今日はここまでやらなきゃ」と完璧主義になると、できない自分を責めてしまい、ストレスが溜まります。タスクは小さく分解し、「これだけできれば十分」と、できることを増やしていくほうが、自信につながります。

4. 職場環境を整える 可能であれば、静かな場所で作業できる環境を確保したり、上司や同僚に協力をお願いしたりすることも有効でした。自分の得意なことや苦手なことを伝えることで、より働きやすい環境を築くことができます。

使える制度は、遠慮せずに使う

病気と向き合う上で、何よりも不安なのが「お金」の問題でした。長く働けない時期が続くと、貯金は減る一方で、焦りや罪悪感ばかりが募っていきます。

でも、そんなときこそ頼ってほしいのが、公的な支援制度です。

  • 医師の診断があれば「精神障害者保健福祉手帳」を申請できる
  • 病状が重い場合は「障害年金」を請求できる
  • 就労支援サービスや割引制度が使えるようになる

こうした制度を利用することで、生活の安定と心の余裕を手に入れることができました。また、元気な時に少しずつでも貯蓄しておくことも、大きな支えになります。お金の問題を一人で抱え込まず、制度やサポートに頼る勇気を持ってください。それは「甘え」ではなく、回復してまた歩き出すための、大切な一歩です。

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自分の病気を伝えるということ

かつての私は、病気のことを伝えないまま働き、体調を崩して職場に迷惑をかけてしまいました。その経験を通して学んだのは、正直に話すことの大切さです。「双極症という病気を、どこまでオープンにすべきか」これはとても難しい問題です。でも、自分の病気や特性をきちんと理解してくれる職場を見つけることで、安心して働き続けることができるようになります。

また、「障害者雇用」という選択肢も、決して特別なものではありません。病気を抱えながら働くための“合理的な選択”として、もっと多くの人が知っておくべき制度だと感じています。

働く場所を選ぶということ

再就職の面接では、私はなるべく自分の状態について伝えるようにしています。もちろん、最初から全てを話す必要はありません。でも、「もしもの時に相談できる」環境をつくることが、長く働き続ける鍵になると感じています。

双極症とともに働くことは、決して簡単ではありません。けれど、「病気だからダメ」なのではなく、「病気があるからこそ、自分に合った働き方を見つける必要がある」のだと、私は思うのです。

最後に

双極症と向き合いながら働くというのは、自分を深く理解し続ける旅のようなものです。無理をせず、頼れるものには頼り、少しずつ自分に合った働き方を見つけていく──そんな風に自分を大切にしながら、少しずつ前に進んでいけたら、それだけで十分です。

読んでくださっている読者の方にも、その方なりの働き方が、きっと見つかります。(続く)

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