この文章は、私自身の経験に基づいた個人的な見解です。
はじめに
私は長い間、自分のことを「うつ病だ」と思い込んでいました。実際に抗うつ薬も処方されていて、飲んだ直後は気分が高揚することもありました。でも、そのたびに衝動的な浪費をしてしまい、自分でもコントロールが効かなくなることがあったのです。
やがて、医師から「双極症Ⅱ型(かつての躁うつ病)」と診断されたとき、不思議とその事実はすんなり受け入れられました。というのも、家族にも同じ病気の人がいたからです。病名自体には、どこか馴染みがあったんですね。私の場合、主にうつ状態と、イライラや焦燥感、怒りっぽさといった混合エピソードが強く出るタイプです。
でも、それでも「精神障害者」という言葉を突きつけられたときの衝撃は、やはり大きかった。病気としては理解できても、「ラベルを貼られた」ような感覚は、どうしようもなくショックでした。だからこそ、今この文章を読んでくださっている読者の方には、同じように苦しんでほしくない。双極症と診断されたことは、人生の終わりではありません。それは、新しい自分と出会うスタートラインかもしれない。そう信じて、私の経験を少しだけ、共有させてください。
うつ状態との向き合い方
私にとっていちばんつらいのは、やはり「うつ状態」です。朝、目が覚めても体が動かない。何も考えられず、頭の中には重たい霧がかかっているような感覚。ベッドの上に、何トンもの重りが乗っているかのようで、起き上がることすらできなくなる。気力はゼロ。ただひたすら眠ったり、スマホでSNSのタイムラインをぼんやり眺め続けたり…。そんな日が、何日も、何週間も続くこともあります。そんなとき、「頑張ろう」「今日こそやらなきゃ」と自分を叱咤しても、逆効果でした。むしろ、できない自分を責めてしまい、どんどん苦しくなるだけ。だから私は、「無理に闘わない」ことを選びました。
記録すること
日頃から私がしているのは「記録すること」です。感情、体調、睡眠時間、活動量――それらを日々、アプリに記録するようになりました。理由はシンプルです。通院のとき、自分の状態を正確に医師に伝えるのがとても難しかったから。人間の記憶なんてあいまいで、1週間前のことすら正確に覚えていないものです。私は、気分記録アプリと睡眠トラッカーを組み合わせて使っています。これで「今の自分」が客観的に把握できるようになり、波のパターンも見えてきました。この「記録する」という行動は、私にとって、自分を責めないための大事なよりどころになっています。
混合エピソードとの付き合い方
双極症の中でも、特につらかったのが混合エピソードです。うつの落ち込みと、躁の焦燥感や怒りが同時にやってくる。外から見ればわかりにくいけれど、内側では感情が暴れ回っていて、自分でもどうしたらいいかわからない――そんな状態です。特につらかったのは、家族との関係でした。家族にも双極症を患っている人がいて、お互いに感情がぶつかると、攻撃的になってしまい、深く傷つけ合ってしまうこともありました。その悪循環を断ち切るために、私たちは距離をとることを選びました。私は実家に帰り、お互いが落ち着くまで物理的に離れて過ごす時間を持ちました。それは逃げではなく、守るための行動。自分を、そして大切な人を守るために「逃げる」ことも、時には必要なんだと学びました。そして、そうした場所を受け入れてくれた家族や、静かに見守ってくれた人たちには、今でも本当に感謝しています。
軽躁・躁状態への対策
私は双極症1型ほどの激しい躁状態はないものの、軽躁になるとやはり注意が必要です。特に出やすいのが、衝動的な買い物、多弁、睡眠時間の減少、落ち着きのなさです。実際に、何度か高額な買い物をしてしまったこともありました。あとで後悔して、自分が怖くなるほどに。私の家族は双極症1型で、躁状態が強く出るタイプです。その姿をずっと見てきた私は、「絶対にああなってはいけない」と、常に心にブレーキをかけています。そのため、少しでも気分が高ぶってきたと感じたら、私はすぐに医師に相談して薬の調整をお願いしています。記録を続けるのもそのためです。
薬と正しく向き合うことの重要性
双極症の治療には、多くの場合、薬物療法が不可欠です。しかし、薬を飲むことは「病気に負けた気がする」と抵抗を感じたり、「眠気がひどい」「口が渇く」といった副作用に悩まされたりすることもあります。しかし、薬は私たちの脳の状態を安定させるための大切なツールです。正しい知識を持ち、医師の指示に従って服用することで、症状をコントロールし、より安定した日々を送ることができます。もし副作用が辛い場合は、自己判断で服用をやめるのではなく、必ず医師に相談してください。
自分らしい向き合い方を見つける
双極症は、人によって症状の出方も、波の大きさも違います。だからこそ、自分の「波」を知り、自分なりのペースで向き合っていくことがとても大切です。私にとっては、「無理しないこと」「記録すること」「早めに相談すること」が、病気と共に生きるうえでの支えになっています。そして、これを読んでくださっている読者の方にも、きっとその方自身の「向き合い方」があるはずです。
最後に
双極症と診断されても、それで人生が終わるわけではありません。むしろ、自分を知り、自分を大切にするための新しい出発点になることだってあるんです。つらい時は、どうか「自分を責めること」よりも、「自分を理解すること」を選んでください。私たちは一人じゃありません。ゆっくりでいい。焦らなくていい。自分らしい生き方を、一歩ずつ見つけていけますように。(続く)

