福岡市早良区にある就労継続支援A型B型事業所つなぐです。このブログでは精神疾患、知的障害、発達障害で就労継続支援事業所に通所している方が障害年金をご自分自身で申請する方法について、数回に分けてご紹介していきます。障害年金の申請をご検討中の方は参考にされてください。
就労継続支援事業所に通所しながら障害年金を受給できますか?
結論から書くと「可能です」。
精神疾患を罹患[りかん]すると、精神症状や身体症状で働くことが難しくなり経済的に困窮することがあります。そのような症状で困っている患者さんを経済的に支える制度の一つが障害年金です。就労継続支援事業所で利用している利用者さんの多くも障害年金を受給しながら病状に合わせたペースで働いています。A型、B型で働きながら給料、工賃をもらっていても、それだけで生活していくには経済的な不安が伴います。就労継続支援A型・B型事業所で通所して、給料や工賃をもらいながら障害年金を併せて受給することは可能ですので年金受給の条件該当する方は障害年金を申請するのもよいでしょう。
障害年金の申請を社会保険労務士に依頼する場合
障害年金の受給申請には社会保険労務士などの専門家に手伝ってもらう方法と自分で申請する方法とがあります。
病状が悪化している時に自分で障害年金の受給申請をするのは想像以上に大変です。そんなときにサポートをしてくれるのが社会保険労務士です。社会保険労務士に依頼すると事務処理を代行してもらえて、申請が通る可能性も高くなります。手続きが複雑になりそうな場合は社労士に依頼するのもメリットが大きいといえます。
一方で社会保険労務士に依頼すると10万円を超える費用が必要になるのはデメリットの一つです。ほとんどの社会保険労務士事務所では「成功報酬制」です。依頼する際の手付金はありませんし[※ただし郵送費などの事務手数料や実費が5,000~20,000円程度必要な場合があります]、年金受給に至らなければ費用が発生することはありませんので安心して依頼することが出来ます。
社会保険労務士事務所は、「社労士」「成功報酬」「(お住まいの地域)」でWeb検索すれば見つかります。
社会保険労務士事務所の成功報酬は一般的に、
・年金の2ヶ月分相当額(加算分含む)+消費税
・110,000円(税込)
※ 遡及請求1を行った場合は2か月分相当額に加えて、遡及額の10%
程度が相場といわれています。
障害基礎年金の場合、2カ月分の支給額は、おおよそ136,000円です。また遡及請求に成功した場合、例えば遡及額が400万円だったとすると、130,600円に加えて40,0000円(遡及額の10%)と消費税(10%)で合計589,600円が成功報酬になります。金額は事務所によって多少変動しますので、詳しくは依頼を考えている事務所に事前に相談しましょう。
成功報酬は基本的に年金が支給され始めてから最初の月に受け取った年金から支払うことになりますので「実質無料」と考えられなくもありませんが、決して少なくはない金額なので、それほど手続きが複雑でないケースでは、ご自身で申請手続きをすることも検討するといいでしょう。
障害年金の申請を自分でする場合
このブログの記事では特に精神障害者の障害年金をご自身で請求するための条件や手続きについて、数回に分けて詳しくご紹介します。社会保険労務士に依頼せずに自分で申請を考えている方は参考にしてください。
まずはご自分が障害年金受給の要件に該当しているか、障害年金を受給できる3つの要件、障害基礎年金に該当する状態、障害年金の対象になる精神疾患の3点を確認して、該当する場合は必要書類を集めて、住所地の市区町村役場の窓口、初診日が国民年金第3号被保険者2期間中の場合は最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターに提出してください。
障害年金を受給できる3つの要件
次の1~3のすべての要件を満たしているときは、障害基礎年金が支給されます。
- 障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの間にあること。
- 国民年金加入期間20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間
- 初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
- 障害の状態が、障害認定日(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)に、障害等級表に定める1級または2級に該当していること。→障害基礎年金(1級、2級)に該当する状態
- 初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。3
障害基礎年金(1級、2級)に該当する状態
「障害年金に該当する状態」とはおおむね以下のような状態のことで、程度によって1級と2級に分かれています。
障害の程度1級
他人の介助なしで日常生活のことができない障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方/行うことを制限されている方、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が該当します。
障害の程度2級
介助が必ずしも必要はなくても、日常生活が困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。就労継続支援事業所に通所しながら障害年金を受給している方の大半は、2級に該当します。2級にあたる障害の程度は、例えば、簡単な食事を準備することは出来ても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が該当します。
障害年金の対象になる精神疾患(及び知的障害、発達障害)
障害年金の対象となる精神疾患(知的障害、発達障害)は以下の通りで医師の診断書が必要です。
1.統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
2.気分(感情)障害(双極症、うつ病など)
3.症状性を含む器質性精神障害4
4.てんかん5
5.知的障害
6.発達障害
障害年金の申請に必要な書類
障害年金の申請に必要な書類は概ね以下の通りです。
- 年金請求書
- 年金手帳、基礎年金番号通知書など基礎年金番号がわかる書類
- 戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明書、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか
- 診断書
- 受診状況等証明書
- 病歴・就労状況等申立書
- 請求者名義の金融機関の通帳等
上記以外にも書類を提出しなければならない場合がありますが、詳細は別の記事でご紹介します。
まとめ
この記事では障害年金を受給できる要件、必要な書類について概要をご説明しました。条件に該当される方は社会保険労務士に依頼する、もしくはご自身で必要書類を集めて障害年金を申請しましょう。
障害年金は就労継続支援事業所に通所していても審査に通れば受給は可能です。一般就労でも条件によっては受給できる場合があります。
必要書類をすぐに揃えられるなど、手続きが比較的簡単な方は、ご自分で申請、受給条件に当てはまるか判断が難しい方は社会保険労務士に依頼して手続きを進めるのがよいでしょう。
経済的な不安を少しでも解消するために、障害年金の制度を積極的に活用してください。
(記事作成:K. S.)
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自分で申請する障害年金(1)-概要-
脚注
- 障害認定日に障害等級に該当しても、障害年金のことを知らずに当時は請求していなかったという方は、障害認定日の時点にさかのぼって年金を請求できる制度を「遡及請求」と呼びます。 ↩︎
- 第3号被保険者とは、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者(夫、妻など)に扶養さ れる配偶者(20歳以上60歳未満)のことです。 ↩︎
- ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。また、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。 ↩︎
- ただし妄想、幻覚があるものは「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」の認定基準を適用 ↩︎
- ただし妄想、幻覚があるものは「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」の認定基準を適用 ↩︎