今回は、精神科医療の基本ともいえる、「3つの柱」について、わかりやすく紹介します。
精神疾患の治療と聞くと、みなさんはどんなイメージを持ちますか?
「医師と話すこと(カウンセリング、心理療法)」「処方薬を飲むこと(薬物療法)」、
これらももちろん大切な治療です。
そして、さらにもうひとつ大事な柱があります。
精神科医療の3本柱とは、
- 薬物療法
- 精神療法(カウンセリング・心理療法)
- リハビリテーション(社会生活技能訓練:SSTなど)
この3つを指します。

薬物療法 脳内のバランスを整える
精神科の治療で最もよく知られているのがこの薬物療法です。
精神疾患は、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ドーパミンなど)のバランスが乱れて起こるとされています。
その乱れを調整し、症状を和らげるのが薬物療法の役割です。
よく使われる薬には、
- 抗精神病薬(統合失調症などに)
- 抗うつ薬(うつ病などに)
- 抗不安薬(不安障害などに)
などがあり、患者さんの状態や症状に合わせて医師が処方します。
精神療法 心と向き合う時間
薬だけでは、なかなか解決できない悩みや問題があります。
そんな時に必要になるのが、「精神療法」です。
精神療法とは心理士や医師と話すことで、自分の気持ちや考え方を整理して心の負担を軽くしていくアプローチです。
種類もさまざまで、
- 認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy、略してCBT)
- カウンセリング
- 家族療法
など、状況や目的に応じた方法が使われます。
リハビリテーション(SST) 社会生活を取り戻す訓練
3つ目の柱は、「リハビリテーション」、特に「社会生活技能訓練(ソーシャルスキルトレーニング、Social Skills Training、略してSST)」と呼ばれるものです。
ここでは、病気によって失われた「日常生活のスキル」をもう一度学び直していきます。
たとえば、
- 挨拶や会話の仕方
- スケジュール管理の方法
- 感情のコントロール
- 買い物や金銭管理の練習
など、日常生活を自立して送るための実践的な訓練が行われます。
それぞれを組み合わせて回復へ
この3本柱は、患者さんの状態やライフステージに応じて、柔軟に組み合わせて使われます。
たとえば、
- うつ病の場合:「休養+薬+心理療法」
- 統合失調症の場合:「薬+心理療法+SST」
- 不安障害の場合:「カウンセリング+薬」
など、オーダーメイドの治療が基本です。
回復は治すだけでなく、より良く生きること
近年、精神医療では「リカバリー(回復)」という考え方が注目されています。
「病気を治す」だけでなく、「自分らしい生き方を取り戻す」ことを重要視するこのアプローチでは、患者さんの価値観や希望を大切にしながら、医療・福祉・地域が連携してサポートを行っていきます。
おわりに
心の病は目に見えにくく、周囲には理解されにくいものです。
精神的な症状が出ているままで放置してしまうと、症状が悪化してしまう可能性があります。
しかし、早い段階で専門的で適切な治療を受けることができれば、回復に向けての対処は進みやすくなる可能性が高まります。
最初は不安や恐れを感じるかもしれませんが、専門家によるサポートを受けながら自身が安心できるペースで回復していくことを目指しましょう。
そして、何よりも自分一人で抱え込まずに、信頼できる人や専門家に相談することが大事です。
早く適切なサポートを受けることで病気の悪化を防ぎ、より良い結果に繋げることができます。
具体的には、早期発見・早期治療による病状の最小化や、より効果的な治療方法の選択、精神的な負担の軽減などが期待できます。
「薬物療法」「精神療法」「リハビリテーション」、この3つの柱を意識することで、より深く精神医療と自身に必要なサポートについても理解が深まるのではないでしょうか。
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