この文章は、私自身の経験に基づいた個人的な見解です。
双極症同士の恋愛と結婚
パートナーと私はどちらも双極症の患者です。双極症VS双極症の激しくぶつかり合った結婚生活について少しお話させてください。
結婚前、私はこの病気についてまったく知識がありませんでした。当時は「うつは心の風邪」と言われ、「治る病気だ」と信じていました。パートナーのうつ状態も比較的穏やかだったため、「この人となら一緒にやっていける」と思い、結婚を決意しました。けれど、それは大きな誤解だったと、結婚後に思い知らされることになります。
パートナーは双極症1型と診断されていて、その躁状態は私の想像をはるかに超えていました。新しいことを次々に始めては周囲を巻き込み、私の生活は混乱の連続でした。特に苦しかったのは、私の人間関係にまで踏み込んできたことです。私の友人や職場の人に電話をしたり、手紙を書いたり、会って一方的に話し続けたりする行動は、私と周囲の人間関係をも崩してしまい、私にとって大きな負担で、心身ともに疲れ果てていきました。
そんな日々の中で、私自身も「うつ状態」と診断されました。そして抗うつ薬を服用した結果、私もまた躁転し、恐れていたことが現実となりました。私自身も双極症と診断されたのです。パートナーの症状を知っていた私は「自分も同じようになるのではないか」という強い恐怖を抱く一方で、「ようやく病名がついて、対処法がわかる」という安堵も覚えました。
同じ病気でも、異なる二つの道
結婚後、私は最初はうつ病と診断されましたが、そこから約5年を経てようやく双極症2型とわかりました。同じ病名であっても、病気への向き合い方は人によって大きく違います。パートナーは治療歴が長いにもかかわらず病識が低く、自己判断で断薬したり、長期間通院をやめたりすることがありました。結婚前には強制入院の経験もあり、それが影響してか入院治療を極端に嫌がり、レスパイト入院すら拒否しました。結果として、治療が長引き、1年働いては2年休職するというような生活が10年以上続き、数年ごとに同じことを繰り返し、私も次第に疲弊していきました。
パートナーの症状は職場のストレスに左右されることが多く、それは私の力ではどうにもできない領域でした。その無力感は大きなものでしたが、一方で躁やうつの波がない時期には、優しく明るく、一緒に旅行や食事を楽しめる時間もありました。思いやりのある人でした。それだけに、病気によってまるで別人のように豹変してしまう姿を見るのは、とてもつらいことでした。
双極症という病気は、私とパートナーの関係に大きな影を落としました。
お互いに傷つけ合いましたが、私の病気の症状で感情の波が激しかった時期には、私の言動がパートナーを深く傷つけてしまったことがありました。その時、私は「ごめんなさい」と素直に伝えることができませんでした。
あの時のことを思い出すと、今でも胸が締め付けられるような思いがします。後悔の念と、どうしようもない申し訳なさが、私の中にずっと存在しています。
繰り返されるサイクルとすれ違う心
繰り返されるパターンの中で、パートナーが躁状態になると私は疲れ果ててうつ状態に。逆にパートナーがうつ状態になると、私は混合状態となり、互いを攻撃し合うことが増えていきました。
この経験から私が学んだのは、同じ「双極症」という共通点があっても、互いを理解し合うことは難しいということでした。
症状の個人差という壁
特に双極症は、人によってうつ症状が強く出る「うつ病型」や、躁症状が強く出る「躁病型」など、症状の現れ方が大きく異なります。同じ病気であるはずなのに、まるで別の病気のように感じられることもあり、相手の苦しみを想像することすら困難に感じることがありました。
同じ医師にかかる難しさ
また、一時期、私たち二人が同じ医師にかかっていたことも、事態を難しくしました。医師は必然的に症状が重い側のサポートを優先せざるを得ず、もう一方は「我慢」を強いられる状態でした。この状況は、共通の苦しみを分かち合うどころか、互いの間に亀裂を生じさせる原因となりました。
疲弊が奪う共感力
そして、最もつらいのは、相手の症状に振り回され、自分自身が疲弊しきってしまうことです。そうなると、理解しようとする余裕も、共感する力も失われ、ただ互いを攻撃し合うだけの関係になっていきました。
離婚、そしてこれから
私たちは最終的に離婚を選びました。
それでも、双極症だからといって恋愛や結婚を諦める必要はないと、私は思っています。大切なのは、まずパートナーの病気について知ろうとする姿勢です。正しい知識を持つことで、相手が今どんな状態にあるのかを客観的に見極められるようになります。そして、自分自身の治療に真摯に向き合うこと。それこそが、お互いを理解し支え合うための最初のステップです。私の経験が、同じような状況にある方にとって、少しでもヒントや支えになれば嬉しいです。
双極症同士の恋愛や結婚は、まるで鏡合わせのようです。お互いの良い部分も悪い部分も映し出し、時に光を、時に影を強く落とし合います。しかし、そこから逃げずに二人で病気と向き合うことで、新しい道が見つかることもあるのかもしれません。

