精神障害者とマル優/特優:障害者の資産形成

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マル優/特優とは?

 精神障害者は一般的に収入や貯蓄が低い傾向にあり、お金や資産運用に関する悩みは切実です。今回は精神障害者が利用できる投資の優遇措置について調べてみました。その一つに「マル優」「特優(特別マル優)」があります。なおこのブログ記事はあくまでも制度についての解説であり、特定の金融商品への投資をすすめるものではありません。投資は自己責任、自己判断においてお願いいたします。

「マル優」とは、少額貯蓄非課税制度のことで、一定の条件を満たす障害者などが対象の税制優遇制度です。預貯金や国債などの利子が、元本350万円まで非課税になります。これは「障害者等の少額貯蓄非課税制度」の通称で、以前は65歳以上の方も対象でしたが、現在は障害者等に限定されています。

「特優」(特別マル優)は「障害者等の少額公債の利子の非課税制度」の通称で、「マル優」と同様、障害者手帳の交付を受けている方など一定の条件を満たした方のみが利用できる制度です。国債と地方債の額面350万円までが非課税になります。

特優はマル優とは別枠で利用できますのでマル優と特優を合わせて利用すれば合計額が700万円までの利息を非課税で受取ることができます。

対象となる人

 国税庁のウェブサイトによると、対象となるのは「国内に住所のある個人で、障害者等に該当する人」となっています。この「障害者等」とは、「身体障害者手帳の交付を受けている人や障害年金を受けている人など一定の要件を満たす「障害者」」のことです。つまり、精神障害者福祉手帳を交付されている方、精神障害で障害年金を受給している方はマル優の対象者となり、この制度を利用することができます。

No.1313 障害者等のマル優(非課税貯蓄)(国税庁)

どのような制度か?

 通常、預貯金や公社債などの利子は、原則としてその支払の際に、15.315パーセント(他に地方税5パーセント)の税率を乗じて算出した所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。

具体的な例を見てみましょう。例えば、マル優の上限350万円を1年間、金利0.21%1で預けた場合、

 満期の定期預金の額は、3,505,858円
 税引き前利息は、7,350円
 税引き後利息は、5,858円

となり、1,492円の税金が発生します。マル優制度を利用すると、この1,492円が非課税となります。

対象となる利息

マル優(少額貯蓄非課税制度)で所得税が非課税の対象となる利息はおおむね以下の通りです。

 預貯金
 合同運用信託
 特定公募公社債等運用投資信託(あるいはMRF)

非課税となるのは、上記の貯蓄の元本の合計額が350万円までの利息です。現在、特定公募公社債等運用投資信託を取り扱っている証券会社はありませんので、実質は、預貯金と合同運用信託の2つがマル優の対象です。

特優=特別マル優(少額公債の利子の非課税制度)で非課税の対象となる利息は、国債および地方債の額面の合計額が350万円までの利息です。

マル優も特別マル優も比較的安全な投資商品が対象になっています。株式や投資信託などのリスクが高い金融商品は対象外です。

合同運用信託

 「合同運用信託」(合同運用指定金銭信託)は一般的にあまりなじみがない金融商品かもしれません。この商品は主に信託銀行(金銭や土地など財産の信託業務を扱うことができる特別な銀行)が取り扱っていて、顧客が資金を信託財産として預け、信託銀行などが顧客にかわって、あらかじめ決められた方針に沿ってお金を管理・運用し、顧客はその収益を受け取るという金融商品です。資金運用の実績に基づき配当率が決まりますが、あらかじめ予定配当率が示されます。配当は一般的に3月と9月の年2回支払われます。なお、障害者の生活の安定を目的として、親族などが信託銀行等に財産を贈与税非課税で信託する「特定贈与信託」はマル優の対象とはなりませんので注意が必要です。

合同運用信託は投資信託と似ていますが違いがあります。主な違いを表にまとめました。

合同運用信託投資信託
購入場所信託銀行や一部の銀行
(少ない)
証券会社や銀行
(多い)
運用方法選べない(信託銀行が指定する)顧客が、株式、債券、コモディティなどから自由に選べる
価格変動なしあり
為替リスクなしあり
預金保護対象対象外
信託報酬高め低め

合同運用信託と銀行定期預金との違いについても表にまとめます。

合同運用信託銀行定期預金
元本割れリスクありなし
預金保護対象対象
中途解約原則できないいつでもできる
金利/予定配当率事前に予定配当率を示し、
運用実績に応じて収益金が支払われる
固定金利

合同運用信託のリスク・リワードは、一般的に定期預金より高く、外貨預金や投資信託よりは低いという位置付けです。合同運用信託は投資信託のような価格変動、為替変動などのリスクを取らず、預金保護の範囲内で、定期預金より高いリターンを目指したい方向けの金融商品といえるでしょう。

実際に信託銀行が取り扱っている代表的な商品をいくつかご紹介すると、三菱UFJ信託銀行(マネフィット)、SMBC信託銀行(プレスティア)、三井住友信託銀行(安心サポート信託)、イオン銀行(利回りの賢人)、[SBI]新生信託銀行(パワートラスト)、みずほ信託銀行(貯蓄の達人)などがあります。2

特定公募公社債等運用投資信託(MRF)

 特別公募公社債等運用投資信託は、公募投資信託の一種で、主に公社債(国債、地方債、社債など)に投資する運用ファンドのことです。特別公募公社債等運用投資信託の投資先には株式は含まれまれず、国債や地方債などの公社債に投資するため、比較的安定した運用を期待できる一方で、元本割れのリスクは低いとされています。しかし2025年5月現在、この金融商品を取り扱っている証券会社はありません。したがって実質的にはマル優で使うことができません。

特別公募公社債等運用投資信託に似た金融商品にMRF(Money Reserve Fund)があります。株式投資で特定口座をお持ちの方にはなじみ深い投資信託ですが、MRFで生じる利息もマル優の対象になります。

MRFとは、証券会社の口座で保有する現金の利回りを高めるための投資商品です。株式や債券の購入・売却代金の受け払い、配当金や利金・分配金などの運用に利用され、安全性と流動性を確保するために、高格付けの公社債や短期金融商品で運用されます。2025年5月現在のMRFの課税前、年率換算の利回りは0.318%程度と定期預金よりは高めです。ただしMRFは元本割れリスクもあり、運用状況によって利回りが変わる投資商品だと理解して利用する必要があります。

国債と地方債

 特優(特別マル優)では日本国債と地方債で受け取る利息が非課税になります。特優はマル優と別枠で350万円の元本が対象です。マル優と特優を合わせると750万円の元本に対する利息が非課税対象になります。なお非課税対象はあくまでも利息のみで、譲渡益、売却益、ストリップス債(割引債)の償還益は課税対象となる点に注意が必要です。また米国債などの外国債の利息も対象外です。

日銀の金融政策正常化にともない、長らくゼロ金利だった日本国債にも金利が付くようになりました。2025年5月現在、日本国債の10年債の金利は1.452%前後で推移しています。これは定期預金やMRFの金利と比較してかなり高い水準です。日本国債への投資を検討している障害者には特優は十分メリットがある制度です。3

マル優/特優を利用するには

 近年インターネットを介した金融商品の取引が主流になってきていますが、マル優/特優を利用する際は店舗での取引や電話等での申し込みが必要です。インターネットで取引した場合は一般口座での取引になる点は注意してください。マル優/特優を利用するために必要な書類(精神保健福祉手帳)など、詳しくはお取引がある銀行、証券会社にお問い合わせください。

まとめ

 精神障害者が資産運用をする際に利用できるマル優と特優の制度について解説しました。それぞれ350万円、合計で700万円の枠が設定されています。投資先は預貯金、合同運用信託、MRF、日本国債、地方債です。対象となるのはこれらの金融商品から受け取る利息になります。譲渡益や償還益はマル優と特優の非課税対象にならない点に注意しましょう。

 マル優も特優もあまり一般には知られていない制度です。比較的安全な金融商品が対象になっているためリスクリワードは高くありませんが、これらの金融商品を検討している方、すでに保有している方は選択肢に入れてもいいでしょう。

(記事作成:K. S.)

  1. 2025年5月現在のゆうちょ銀行の定期預金の利回りで計算しています。 ↩︎
  2. この情報は2025年5月時点の情報で、その完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。またこのブログ記事はこれらの金融商品への投資を勧誘するものではありません。 ↩︎
  3. 日本国債はリスク商品であり、投資は自己責任においてお願いします。このブログ記事は特優制度の解説であり、日本国債への投資を勧誘するものでも推奨するものでもありません。 ↩︎

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