福岡市早良区の就労継続支援事業所つなぐです。
運転免許の取得は、移動の自由を広げ、社会参加の機会を増やす大きな一歩となります。多くの自治体では、障害のある方々が運転免許を取得する際の費用を補助する助成事業を実施しています。
今回は、当事業所が所在する福岡市の助成事業を詳しく解説するとともに、福岡市周辺の9つの自治体(北九州市、糸島市、太宰府市、筑紫野市、大野城市、那珂川市、志免町、宇美町、粕屋町)の制度状況について、当事者が知っておくべきポイントをまとめていきます。
はじめに
障害者が移動手段を確保することは、就労や日々の生活の質を高める上で非常に重要です。しかし、自動車学校の費用は大きな負担となりがちです。
福岡市をはじめ、多くの自治体が実施している「障害者自動車運転免許取得助成事業」は、そうした経済的負担を軽減し、ご自身の社会参加を支援するための制度です。ただし、自治体によって対象となる障害種別や手帳の等級が細かく定められているため、ご自身の居住地の制度を正確に把握する必要があります。
精神障害者を対象とする自治体と対象外の自治体
福岡市およびその周辺の10自治体では、障害者の運転免許取得を支援する助成事業が行われています。しかし、その対象に精神障害者保健福祉手帳の保有者を含むかどうかは、自治体によって分かれています。
精神障害者にも助成事業を実施している自治体(6市)
- 福岡市
- 北九州市
- 糸島市
- 太宰府市
- 大野城市
- 那珂川市
精神障害者は助成事業の対象外となっている自治体(4市町)
- 筑紫野市
- 志免町
- 宇美町
- 粕屋町
このリストにない福岡県内の他の自治体や、他県での実施状況については、必ずご自身の居住地の役所にお問い合わせください。
助成金額について
助成金額も、自治体によって異なります。以下に、精神障害者保健福祉手帳保有者を対象としている自治体の金額をまとめます。
- 福岡市: 上限10万円(住民税非課税世帯は上限15万円)
- 北九州市: 一律5万円
- 太宰府市、糸島市、大野城市、那珂川市: 上限10万円
福岡市の助成事業の詳しい条件
ここでは、特に当事業所が所在する福岡市の助成事業について、より詳細な条件を見ていきましょう。公式サイトに記載がない条件についても、区役所に問い合わせて確認した内容を追記します。
【対象者】
- 精神障害者保健福祉手帳(1~3級)を保有している18歳以上の方(当該年度内に18歳に達する方を含む)。
- 福岡市内に1年以上居住している方(助成金請求時まで引き続き居住している必要があります)。
- 所得制限あり:市民税が16万円未満であること。
【対象となる運転免許】
- 第一種普通自動車運転免許の取得費用の一部が助成対象となります。
【申請と助成金支払いの流れ】
- 必ず自動車学校入校前に申請する必要があります。自動車学校入校後の申請は不可となります。
- 助成金が実際に支払われるのは、運転免許を取得した後になります。
【期間に関する条件】
- 取得期間の制限: 申請した年度の年度末(3月31日)までに運転免許を取得する必要があります。
- 期間延長: やむを得ない事情がある場合、申請は1回のみ、翌年度末まで期間を延長することができます。延長したい場合は必ず早めに各区の福祉・介護保険課にご相談ください。
【利用回数と救済措置】
- 助成金は1回しか利用できません。
- もし自動車学校に通っても運転免許を取得ができる見込みがない場合の救済措置も設けられています。取得が難しいと感じた場合は、早めに各区の福祉・介護保険課にご相談ください。
【補足事項(区役所確認済)】
- 公安委員会の適性試験の受験有無: 適性試験が求められる自治体もありますが、福岡市では助成条件に影響はありません。
- 免許失効・取消の有無: 行政処分歴がある場合、助成を受けられない自治体もありますが、福岡市では助成条件の影響はありません。
- 上限額について: 「上限10万円」とは、取得費用が例えば9万円だった場合は9万円まで助成される、という意味です。取得費用の一部(例えば3分の2)を助成し、その上限が10万円というような縛りではありません。
申請に必要な書類
以下の書類を持参し住所地の各区福祉・介護保険課へ申請します。
- 精神障害者保健福祉手帳
- 前年度の市民税課税状況が不明な場合、それを証明する書類
- 住民票が必要となる場合があります。
- 医師の意見書が必要になる場合があります。
まとめ
精神障害者向けの運転免許取得助成事業は、当事者の社会参加を力強く後押ししてくれる制度です。しかし、自治体ごとに制度内容が異なるため、まずはご自身の居住地の制度を確認することが肝心です。身体障害者と知的障害者にのみ助成があり、精神障害者には助成がない自治体もあるので必ずご確認ください。
また、比較の結果、福岡市は周辺の自治体よりも補助額が多く(非課税世帯への支援が他の自治体よりも手厚い)、条件も緩やかであることが分かりました。
申請のタイミングや所得制限、期間制限など、細かな条件を見落とさないように注意が必要です。これから運転免許の取得をご検討されている方は、まずはお住まいの地域の役所に問い合わせてみましょう。
参考文献・関連情報
市障がい者自動車運転免許取得助成事業の申請を受け付けます 福岡市(2025年)
「福岡市障がい者自動車運転免許取得助成事業」 の申請受付 福岡市(2025年)
障害者自動車運転免許取得助成事業の見直しについて 北九州市(2025年)
自動車運転免許取得費の助成を行います 太宰府市
自動車免許・自動車改造の助成 糸島市(2020年)
自動車運転免許取得費用の助成 大野城市(2024年)
障がい者自動車運転免許取得助成事業 那珂川市(2024年)

