はじめに
精神障害を抱える方々にとって、収入面での不安や出費の多さは大きな課題となりがちです。国の制度には、こうした状況をサポートするための様々な税制上の優遇措置が存在します。
ここでは、精神障害者保健福祉手帳を取得された方が利用できる、税金の控除や減免、非課税制度について簡潔にまとめています。これらの制度を活用するために、具体的な内容を把握しておきましょう。
精神障害者が受けられる税金の控除、減免、非課税について
精神障害者保健福祉手帳を取得するメリットの一つは、税金の優遇措置を受けられる点にあります。この優遇措置は、主に所得税や住民税などの国税、地方税に適用されます。
手帳の等級などによって控除額などが異なるため、まずはご自身の障害者区分を確認することが重要です。1
障害者の区分
障害者の区分
同居特別障害者: 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族のうち、納税者ご自身、ご自身の配偶者、またはご自身と生計を一にするその他の親族のいずれかと同居を常況としている人を指します。
特別障害者: 精神障害者保健福祉手帳1級を保有している方
普通障害者: 精神障害者保健福祉手帳2級または3級を保有している方
控除、減免、免除を受けられる税金
所得税(控除)
障害者控除は、ご自身や扶養家族に障害者がいる場合に受けられる所得税の控除制度です。確定申告や年末調整で手続きを行います。
同居特別障害者の控除額:75万円
普通障害者(手帳2級・3級)の控除額:27万円
特別障害者(手帳1級)の控除額:40万円
住民税(控除)
所得税と同様に、住民税でも障害者控除が適用されます。控除額は自治体によって異なるため、ご自身の居住地の情報を必ずご確認ください。2
以下は、福岡市の事例です。
同居特別障害者の控除額:53万円
普通障害者(手帳2級・3級)の控除額:26万円
特別障害者(手帳1級)の控除額:30万円
相続税
相続人の中に障害者がいる場合に、相続税の控除を受けることができます。3
特別障害者(1級)の場合:85歳に達するまでの年数1年につき20万円の控除
普通障害者(2級・3級)の場合:85歳に達するまでの年数1年につき10万円の控除
自動車税・軽自動車税
精神障害者保健福祉手帳1級(※2級3級は対象外)を保有している場合、ご自身が所有・運転する自動車、または生計を同じくする方がご自身のために所有・運転する自動車について、自動車税・軽自動車税の減免が受けられる場合があります。
福岡県の普通自動車税減免の事例4
福岡県では、精神障害者保健福祉手帳1級を保有する方が対象となります(2級・3級は対象外)。
減免を受けられる金額は、最大45,000円です。
例1: 排気量が1,500cc超~2,000cc以下の車種(フィット、ノート、アクアなど)は、自動車税が45,000円以下となることが多いため、通常は全額免除になります。
例2: 排気量が2,000cc超~2,500ccの車種(カムリ、セレナなど)で、自動車税が51,000円だった場合、減免額45,000円を差し引いた6,000円の支払いが生じます。
軽自動車税について5
軽自動車税の減免は住所地の市区町村が管轄しています。 福岡市では、精神障害者保健福祉手帳1級を保有する方が、一定の所得要件などを満たすことで全額減免となるケースが多いです。ただし、詳細な適用条件は各市区町村によって異なるため、必ず事前にご自身の居住地の窓口で確認しましょう。
少額貯蓄の利子等の非課税(非課税)
いいわゆる「マル優」や「特別マル優」と呼ばれる制度です。低金利が続く中、メリットは限定的かもしれませんが、資産形成を考える上で知っておくべき制度です。
マル優:銀行預金などの利息が非課税になります。非課税対象の元本は350万円までです。6
特別マル優:日本国債などの配当金が非課税になります。非課税対象の額面は同じく350万円までです。7
注意点:
マル優、特別マル優で非課税となる税金の大まかなシミュレーションは過去記事「精神障害者とマル優/特優:障害者の資産形成」でご紹介していますので、ご興味のある方はそちらをご覧ください。
この制度は、金融機関にご自身で申請しないと利用できません。
利用を検討される場合は、口座を開設する前に金融機関にご相談ください。
精神障害者とマル優/特優:障害者の資産形成(過去記事)
まとめ
精神障害者保健福祉手帳を保有することで受けられる税制上の優遇措置は多岐にわたります。
これらの制度は、ご自身で手続きを進めなければ適用されません。それぞれの制度の詳細な条件や申請方法を把握し生活状況に合わせて活用することが重要です。
制度の詳細は、各省庁や自治体のWebサイトをご確認ください。
脚注
- 障害者と税(国税庁) ↩︎
- 税の控除・減免(福岡市) ↩︎
- 障害者の税額控除(国税庁) ↩︎
- 身体障がい者等の方の自動車税(環境性能割・種別割)・軽自動車税(環境性能割)の減免制度概要(福岡県) ↩︎
- 軽自動車税(種別割)の減免(福岡市) ↩︎
- 障害者等のマル優(非課税貯蓄)(国税庁) ↩︎
- 障がい者や遺族年金受給者などの非課税貯蓄「マル優・特別マル優」(一般社団法人全国銀行協会) ↩︎

