このブログ記事は、私自身の経験に基づいた個人的な見解です。
「誰にも言えない…」その気持ち、ひとりで抱えていませんか?双極症と向き合う中で、自分の病気を他者に伝えるかどうかの選択は、多くの人にとって大きな悩みとなります。誰に話すのか、どのタイミングで話すのか、どのように伝えるのか――その決断は、生活や人間関係に深く影響します。私はこれまで、カミングアウトを通じて得られた安心感と、同時に直面した不安や悩みを経験してきました。ここでは、私の体験をもとに、カミングアウトがもたらす「光と影」、そして考えておくべきポイントをを私なりにまとめました。
カミングアウトで得られる安心感
病気をオープンにすることには、思った以上のメリットがあると私は感じています。まず第一に、心の安心感です。双極症を隠すために無理をして嘘をついたり、無理に行動したりしていると、知らず知らずのうちに心身に負担がかかります。「もう隠さなくてもいい」という気持ちは、漠然とした不安から解放され、心の安定に直結します。信頼できる人に打ち明けることで、「一人ではない」という感覚を得られ、体調が悪いときには助けを求めやすくなるのも大きな安心です。
また、職場や学校でカミングアウトすることで、休職や勤務調整、学業面での配慮など、合理的なサポートを受けやすくなることもあります。気分の波があっても生活や学業を継続しやすくなる点は、カミングアウトの大きなメリットです。
カミングアウトがもたらすリスク
しかし、カミングアウトにはリスクも存在します。残念ながら、精神疾患に対する偏見はまだ社会に根強く残っています。病気を打ち明けたことで、「この人は信用できない」「重要な仕事を任せられない」といった不当な評価を受ける可能性も否定できません。また、信頼していた相手が戸惑い、距離を置くこともあり得ます。場合によっては、人間関係が変化し、今まで通りの関係を維持することが難しくなることもあります。
さらに注意すべきは「アウティング」です。これは、本人の意思に反して病気の情報が他者に広まってしまうことを指します。信頼して話した相手が、知らないうちに情報を共有してしまう可能性もあるため、カミングアウトは慎重に判断する必要があります。リスクを理解しつつ、自分の心の準備と状況に応じて選択することが大切です。
誰に話すかを考える
カミングアウトは、相手によって伝え方やタイミングを工夫することが重要です。
家族や親しい友人
最も身近な存在である家族や親しい友人には、心の準備ができたら早めに話すことを検討してみてください。その理由は、本人に次いで、家族や友人が病気の影響を受ける可能性が高いためです。病気の波があるときには、家族や親しい友人も心配や混乱を抱えることがあります。無理に話す必要はありませんが、「この人になら話せる」と思える信頼できる相手を選ぶことが大切です。身近な理解者がいることで、体調の変化や日常のサポートを得やすくなり、生活全体の安心感にもつながります。
職場
職場でのカミングアウトは特に慎重さが求められます。上司や同僚に話す場合は、その人が信頼できるか、病気について理解があるかをよく見極めましょう。業務上の配慮を得たい場合や休職を検討する場合など、目的が明確な場合にのみ話すのが安全です。ここでも、本人の意思に反して情報が広まる「アウティング」のリスクを考慮しながら判断することが重要です。
恋人やパートナー
長く関係を築くためには、できるだけ早く病気について伝えることがお互いの安心につながります。病気を伝えたことで離れていく相手なら、その関係は元々のご縁でなかったと割り切ることもできます。反対に、病気を受け入れ理解して支え合えるパートナーとの出会いは、人生においてかけがえのない財産となります。
障害者というもうひとつのカミングアウト
双極症と向き合う中で、精神障害者保健福祉手帳という選択肢が出てくる人もいるでしょう。手帳の取得は、経済的な支援や就労における合理的配慮など、生活を支えるための重要なツールです。
しかし、手帳を持つことは、「障害者」として自分を周囲に開示することでもあります。これは単に病名を伝えることとは異なり、新たなカミングアウトの局面を生み出します。手帳の存在が、より強い偏見や誤解を与えてしまうリスクも考えられます。手帳を取得するかどうかは、得られる支援と、伝えることによって生じる影響の両方を考え、自分自身のペースで決めることが重要です。
タイミングと伝え方の工夫
カミングアウトのタイミングで最も重要なのは、自分の心の準備が整っているかどうかです。焦って話す必要はなく、「話したい」と思えるときがベストです。事前に話す内容を整理し、落ち着いた状態で伝えることで、相手の理解も深まります。
うつ状態のときには、連絡や行動が遅れがちになることを伝えると良いでしょう。例えばLineのメッセージにも「はい」とだけ返すことやそっけない返信があるかもしれない、と事前に伝えるだけで、お互いの不安は軽減されます。躁状態のときには、気分が高揚して多弁になったり衝動的な行動をとったりする可能性があることを伝え、迷惑だと感じたときははっきり伝えてほしいとお願いしておくことも有効です。
カミングアウトはゴールではない
カミングアウトはゴールではなく、病気を知ってもらうための「通過点」であり、「一人じゃない」と実感する旅の一部です。病気を打ち明けたからといって、すべてが解決するわけではありません。それでも、一歩踏み出すことで、理解し支えてくれる人との新しい関係性が生まれる可能性があります。
焦らず、自分の病気を受け入れ、少しずつ生活や人間関係を整えていくことが、双極症と共に生きる力となるのです。この文章が、この記事を読んでくださった方が、話したいと思える相手に向かうための小さな勇気になれば幸いです。
